第24章

                いけれど」「……ちょっとした、ツーリングだよ」自転車でだけどな、と付け加えた。ながそではだかむやみひまかいしょう89試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中それを聞いて、戦場ヶ原は「ふうん」と頷き、公園の入り口の方を、一回、振り向いた。その方向には、そう、駐輪場がある。「じゃあ、あの自転車、阿良々木くんのだったのね」「ん? ああ」「フレームは酸化鉄でコーティングしているのじゃないかってくらいに錆びていたし、チェーンも切れて外れていて、サドルと前輪が無くなっていたけれど、そう、あんなになっても自転車って動くものなのね」「それじゃねえ!」それは放置自転車だ。「そういうのが二台あった他に、もう一台、格好いい奴があっただろ! 赤い奴! それが僕のだ!」「ん……ああ。あのマウンテンバイク」「そうそう」「MTB」「まあ……そうだ」「MIB」「それは違う」「ふうん。あれ、阿良々木くんのだったんだ。でも、そうなるとおかしいわね。前に、私が後ろに乗っけてもらった自転車とは随分造形が違うみたいだけれど」「あれは通学用。プライベートでママチャリなんて乗れるわけねーだろ」「なるほどね。阿良々木くん、高校生だもんね」ふむふむと、頷く戦場ヶ原。お前も高校生なのだが。「高校生、マウンテンバイク」「含むところのありそうな物言いだな……」「高校生、マウンテンバイク。中学生、バタフライナイフ。小学生、スカートめくり」「その悪意のある羅列はどういう意味だ!」「助詞も形容詞もないのだから、悪意があるかどうかなんてわからないでしょう。勝手な推測で女の子に向かって大声を出さないでよ、阿良々木くん。恫喝だって暴力の一つなのよ?」それなら毒舌だって暴力の一つだろう。なんて言っても、仕方ないのだろうけれど……。「じゃあ、助詞と形容詞を足してみろよ」さどうかつ90試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「高校生『の』マウンテンバイク『は』、中学生『の』バタフライナイフ『や』、小学生『の』スカートめくり『より』、『有り得ない』」「フォローする気がないのかよ!」「やあねえ阿良々木くん。そうじゃなくて、ここでの突っ込みは『有り得ない』は形容詞じゃなくて動詞プラス打消しの助動詞だ、でしょう」「そんなもん咄嗟に言われてわかるか!」さすがは学年トップクラスの成績保持者。いや、わからないのは僕だけなのかな……。国語は苦手だ。「お前な、僕はいいよ。僕はそこまでマウンテンバイクが好きってわけでもないし、それに、僕はもう今更だから、お前の暴言については、ある程度我慢がきくからさ。我慢っていうか、融通っていうかがな。でも、マウンテンバイクに乗ってる高校生なんて、世界中、五万といるぞ? お前はそいつらを、全員まとめて敵に回すのか?」「とても最高ね、マウンテンバイク。高校生ならば誰もが憧れる逸品だわ」一瞬で手のひらを返す戦場ヶ原ひたぎ。意外と保身的な奴だった。「その最高さ加減が阿良々木くんにあまりにも似合わないものだから、ついつい、心にもないことを言ってしまったわ」「責任転嫁までしやがった……」「細かいことをごちゃごちゃとうるさいわね。そんなに殺されたいのなら、いつでも半殺しにしてあげるわよ」「残酷な仕打ちだ!」「阿良々木くん、この辺、よく来るの?」「平気で話題を戻すよな、お前は。いや、多分、初めてだと思う。適当に自転車走らせていたら、ちょっと公園があったんで、なんとなく、休んでいただけだよ」正直言って、もっと遠くまで――いっそ沖縄とかくらいまで来たつもりでいたけれど、こんな風にたまたま戦場ヶ原に出会ってしまったということは、当たり前だけれど、自転車くらいじゃ、住んでいる町からは出られもしないということだろう。それは正に、牧場のごとく。あーあ。免許でも取ろうかなあ。でもやっぱ、卒業してからだよなあ。「戦場ヶ原は? 慣らしって言ってたけれど、なんだ、じゃあ、リハビリの散歩ってわけゆうずうてんかおきなわ91試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中か?」「慣らしというのは服の慣らしよ。阿良々木くんは男の子だからそういうの、しないのかしら? 靴の慣らしくらいはするでしょう。まあ、平たく言えば散歩というわけね」「ふうん」「この辺りは、昔、私の縄張りだったのよ」「………………」縄張りって……。「ああ、そういや、お前、二年生のときに、引っ越ししているんだったっけ。何、それまで、この辺りに住んでいたってこと?」「まあ、そういうこと」そういうことらしかった。なるほど――ということは、単に散歩とか、服の慣らしとか言うよりも、本質的には、自身の問題が解決したゆえに、昔を懐かしんで――ということもあるのだろう。なかなか人間らしい行動を取るじゃないか、こいつも。「久し振りだけど、この辺りは――」「どうした。全然、変わらないってか?」「いえ、逆。すっかり変わっちゃった」すぐに答えた。既にある程度、散策は終わっているらしい。「別に、そんなことでセンチメンタルな気持ちになったりはしないけれど――でも、自分が昔住んでいた場所が、変わっていくというのは、どことなく、モチベーションが削がれる感じがするわね」「仕方ないことじゃないのか?」僕は生まれたときからずっと同じ場所で育っているので、戦場ヶ原が言うような感覚は、正直、全くわからないけれど。田舎と呼べるような場所も、僕にはないし――「そうね。仕方のないことだわ」戦場ヶ原は、意外なことに、ここではろくな反論もせずに、そう言った。この女が何か意見めいたことを言われて反論しないなんて、珍しい。あるいは、僕とこの話題を続けても、何ら得るところはないと思ったのかもしれない。「ね。阿良々木くん。そういうことなら、隣、構わないかしら?」「隣?」「あなたとお話がしたいわ」なわば(继续下一页)六六闪读 663d.com