第74章

                を探してみます」「そうしてくれるか」「ええ。阿良々木さん、迷子のお子さんを捜すには、細心の注意と人手が必要です。全部一人でなんとかしようとすれば、ミイラ取りがピラミッドということもありますからね」「ピラミッド!? スケールでかっ!」「阿良々木さんもマイナスチックにならず、心を強くもってことにあたってください」「マイナスチックはさすがに間違い過ぎだ!」「迷子探しとなると確かに一国一城を争う事態ですが、冷静さを失ってはいけません」「その通りだが正しくは一刻一秒だな!」「見かけたら、近付くことはやっぱりできませんけれど、公衆電話からでも、阿良々木さんの携帯電話に連絡を入れさせてもらいます」「……お前、公衆電話は使えるのか?」「当たり前です。わたしはメカに強いのです」「今朝と言っていることが逆だが……」「何を言うのです。わたしは二〇一一年以降もテレビを見続けることができる逸材ですよ?」「どっち道、地上デジタル放送が見られる程度の強さなのか……」「ワンセグって、犬の何かですよね?」「馬鹿だ!」冗談はともかく。さが261試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中いくらなんでも、強かろうが、弱かろうが、公衆電話が使えないということはないだろう。こういうときだけは、公衆電話がまだまだ健在の、田舎町に感謝だ。さすが、点在するコンビニには必ず駐車場が完備されている、パチンコ店でさえもはやらず潰れたというちょっと悲しい伝説を持つ我が町である。さておき、八九寺と別れた。八九寺とも会えたのだ、忍を見つけることだってきっとできるはず、と少し前向きになったところで、僕は考える。手伝いの申し出はありがたかったが、そうは言っても、忍と(外見年齢は)そう変わらない八九寺である、過度の期待は禁物だ。子供ならではの探し場所、隠れ場所、子供しか入れないような空間というのもあるだろうから、そっち方面には期待できるが、並の子供よりはずっと広いとはいえ、八九寺の行動範囲にも限度があるはずだ。子供としての活動限界もあるだろう。しかし――人手が必要。それは、八九寺の言う通りだった。だから。四時が近付いた頃、僕は千石の家に電話をかけた。千石は、僕の出身中学に通っているから、どこにも寄り道していなければ、そろそろ家に帰っているはずだ――確か、帰宅部という話だったし――正直言って、それは高い可能性とは言えなかったが、しかし、幸運なことに、彼女は在宅だった。「暦お兄ちゃん」そういう千石の声は、弾んでいるように思えた。面と向かわずに済む電話では、どうやら千石のテンションもまた、違うようだ。この子は早く携帯電話を持った方がいいと思った。「暦お兄ちゃん。早速撫子に電話してきてくれたの? ……嬉しい」「ああ……昨日の今日で、悪いな。えっと……」ううん、どこから説明したものか……。八九寺のときとは違って、千石に対しては、一から説明しなくちゃいけないから……。「……? どうしたの? 暦お兄ちゃん」「あ、いやー…その」「落ち着いて。何かあったの?」歯切れの悪い僕に、心配そうな千石だった。262試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「何かあったって言うか――」「と、とにかく、落ち着いて。落ち着いてよ、暦お兄ちゃん。そ、そうだ、今から撫子が、面白い話をしてあげるから」「………………」すげえことを言い出した。面白い話をすると言ってから面白い話をしようとは、ものすごい自信だ……。「えっとね、漫画やアニメなんかでは気楽そうにもてはやされてるけれど、メイドっていうのは、意外と大変な仕事なんだよ」「『大熊猫大好き』さんはお前かよ!」どうりでわかりにくかったわけだ!お前絶対合コンなんか参加したことないだろ! 葉書の中では別の自分になってんじゃねえ……。「お、落ち着いた? 暦お兄ちゃん」「おお……二周して、なんか落ち着いちゃったよ」最初から落ち着いてなかったわけでもないのだが。でもまあ、言い方を選んでも仕方ない。「それで? 撫子に用事があったんでしょう?」「うん……千石。頼みたいことがあるんだ」「頼みたいこと……何?」「忍を探して欲しい」僕は、結局、単刀直入にそう言った。「忍を直接見たことがある人間は、お前を含めてもそうはいないんだ――お前が手伝ってくれると、正直、助かる」「探してって……いなくなったの? あの……えっと、忍ちゃん」「ああ」「出掛けてるだけ……じゃなくて?」「一晩戻ってない」「そ、そうなんだ……」電話の向こうから――躊躇するような気配が感じられた。ああそうだ、うっかりしていたが、千石は、忍にずっと睨まれていたと言っていた――忍のことを、千石は、本能的に、怖がっていたのだった。263試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中そうだな、と僕は判断する。どんな間接的な形であっても、千石はもう、怪異とかかわるべきではないと――僕はそう考えていたはずだ。それを僕の方から引き込んでどうする――いくら、状況が状況だとは言え……。「悪い、千石。甘えだったな。僕は――」「う、ううん。暦お兄ちゃん。そうじゃないの」「そうじゃないって――」「ここで即答したら、なんだか嘘臭くなっちゃうんじゃないかって、思っただけ……手伝わせて。お願い」「ああ……でも、本当に、いいのか?」「うん」珍しく。力強く――千石は言った。それは、果たして、電話だからだろうか。面と向かってないからだろうか。「暦お兄ちゃんにお返しができるなら――それでいい。暦お兄ちゃんは、撫子を手伝っててくれたように――忍ちゃんを、探してるんだよね?」「? ……まあ、そうだ」「だったら、手伝わないわけにはいかないよ」そう言って――くれるのか。手伝わないわけにはいかない、と。「……滅多なことはないとは思うけれど……でも、安全を完全には保証できないぞ。力はほとんど失っているとは言え、吸血鬼なんだから…(继续下一页)六六闪读 663d.com