第46章

                かったわね」と言った。そして「まあいいわ」とも。どうも、あんまり早く来られても、困るようだった。だとうともなこんがんこ157試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中戦場ヶ原も私服。髪は後ろで二つに振り分けている。学校では、食事中と体育の時間以外はストレート(最近は、体育にも普通に参加するようになった戦場ヶ原である)、校外では原則として髪を縛るというのが、戦場ヶ原の中のルールである。二つに振り分けると、どことなく委員長?羽川とイメージがかぶるのだが、それも含めて、動きやすそうな、お洒落なファッションだった。これからどこかに出掛ける感じの服だ、と思ったら、案の定、「じゃあ行くわよ。ついてらっしゃい」と、彼女は言った。しかし、案の定なのはそこまでだった。そこからは予想外の展開が待っていた。戦場ヶ原ひたぎは、自身の住処であるアパート民倉荘の前に駐車されていた一台のジープへと、僕を導いたのだった。クルマで移動。それはいい。この車社会において、何の質問も何の文句もない。問題は、僕も戦場ヶ原も、校則によって免許の取得を厳格に禁じられており、四輪免許はおろか原付免許すらも持ち合わせていないというところだった。必然、僕が乗り込むのも戦場ヶ原が乗り込むのも、ジープの後部座席だったのだ。では運転席にいるのは誰か。戦場ヶ原ひたぎの父親だった。「…………………………」初デートに、彼女の父親が同伴って……。拷問みたいなデートだ……。何の記念だよ、これ。車内全体にどう好意的に見ても気まずい雰囲気が漂う中、挨拶もそこそこに、ジープは出発した。そこに至っても、僕はまだ目的地を聞くことはできなかった。というか、目的地など、今となってはどうでもいい。当然、戦場ヶ原父とはこれが初対面。これで戦場ヶ原父があけっぴろげで気さくなお方だったならまだしも、千石の例を引き合いに出すまでもなく、僕にとっては最も対応しづらい相手である、寡黙なお方だった。年下の女の子で寡黙ならともかく、年上の男性で寡黙とは……。仕事帰り――いや、まだ仕事中であるかのようなきっちりした格好で、戦場ヶ原父は、静かにハンドルを操作している。確か、外資たみくらそうごうもんかもく158試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中系の企業に勤めているとか、そんな話だったっけ……。見るからに堅そうな人だ。被害妄想もここに極まれりという感じだが、僕なんか、この人からはどんな理由で怒られても仕方がないような空気がある。それにしても……そういう事情をさておいてみれば、この人、ロマンスグレーの総髪で、僕らの年代の男親としては年配といった風だが、やけに格好いい。俳優さんみたいだ。まさしく、ナイスミドルという言葉が相応しい。のろけになりかねないようなことを言わせてもらえれば、戦場ヶ原ひたぎはクラスにおいて深窓の令嬢と言われるほどの美人なのだが、なるほど、こういう娘にはこういう父親がいるものなのか。うーん。父親が格好いいというのは本人が格好いいよりポイントが高いよな……。「どうしたの、阿良々木くん」しばらく距離を進んだところで、隣に座っている戦場ヶ原が、僕に話しかけてきた。「随分と無口じゃないの」「あのな……お前、今の状況、わかってんのか?」「わからないわね。今とはいつ。状況とはどんな漢字を書くのかしら」「そんなところからわかってねえのかよ!」とぼけやがって、この女。人の気も知らずに。「阿良々木くん。初めてのデートだから緊張するのはもっともだけれど、でも、そんなことじゃ、持たないわよ。夜は長いのだから」「ああ……」僕は今初めてのデートだから緊張しているわけじゃない……!夜のデートが意味深長だとか考えていた頃の自分が本気で懐かしい。あの頃の僕は幸せだった。夜が長いという事実が、正直、ただただ恐ろしい。どうして夜は長いんだ。今はただ、この時間が一刻も早く終わってくれればと、僕は願っている……。「ねえ阿良々木くん」戦場ヶ原が平坦な口調で言う。しかし、こいつには緊張はないのだろうか。「私のこと、好き?」「…………!」ものすごい嫌がらせを受けてる!毒舌以外にも、こんなことができるのかこいつ!しんそう159試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「答えてよ。私のこと、好き?」「…………」「何よ。答えてくれないの? 阿良々木くん、まさか私のこと、好きじゃないのかしら」嫌がらせだ……。この上ない嫌がらせだ……。「す、好きです……」「そう」にこりともしない戦場ヶ原。無表情この上ない表情だった。「私も好きよ。阿良々木くんのこと」「どうも……ありがとう」「いえいえ」……ていうか。お前は平気なのか。実の父親の前で、そんな会話をすることが本当に平気の平左なのか……いや、違った、こいつは僕に嫌がらせをするためなら、自分が傷を負うことをためらわない性格なのだった。ならばそれよりも、と、僕は恐る恐る、運転席の方を、横目でうかがう(恐る恐る過ぎて、とてもじゃないが正面向きには見れない)。戦場ヶ原父は、しかし、全くと言っていいほどの無反応だった。一心不乱に、運転に集中している。クールな人だ……。どうやらこの方向、ジープは高速道路に向かっているらしい。高速道路……かなりの遠出という感じなのか。まあ、そうでなければ、さすがにさすがの戦場ヶ原も、デートに父親を連れ出そうとは思わないだろうが……。十分後には、予想通り、ジープは高速道路に入った。もう逃げられない。いや、そうでなくとも、最初から、さすがに逃げるつもりはないけれど。「阿良々木くん、本当に静かね。とても口数が少ないわ。いつもはもっとお喋りしてくれるのに、今日は機嫌が悪いのかしら?」「機嫌がどうとかじゃなくてな……」「ああ。頭が悪いのね」「混乱に乗じて言いたいだけのことを言ったな!」「阿良々木くんは突っ込みだけはいつだって腕白なのね。いいわ。じゃあ親切にも、私から話(继续下一页)六六闪读 663d.com